テナントビルの管理会社変更事例|年間15.4万円の経費削減と家族信託の導入
テナントビルの管理を委託していても、入居者からの問い合わせや修繕対応、水道検針などを、オーナー自身が行っているケースがあります。
普段は対応できていても、オーナーの体調や生活環境が変われば、これまでと同じ方法で賃貸経営を続けることが難しくなるかもしれません。
管理会社を変更する目的は、単に委託先を変えることではありません。オーナーの負担を減らし、建物と収益を守れる管理体制を整えることです。
2026年3月、emonでは福岡市内の複数テナントが入居するビルについて、新たに管理を受託しました。
今回の案件では、従来オーナー自身が担っていた業務を見直し、賃料滞納の解消、水道料金の管理改善、清掃・設備保守契約の変更などに対応。継続的な固定費を年間換算で15万4,000円(税別)削減しました。
さらに、ご家族と協議を重ね、将来の賃貸経営に備える家族信託の導入も進めました。
この記事のポイント
管理会社の変更で見直したのは、日常業務だけではありません。固定費、入居者対応、収支管理に加えて、ご家族が将来の賃貸経営を継続できる仕組みまで整えた事例をご紹介します。
1.管理会社がいても、オーナーの負担が大きかった
今回のビルでは、以前から管理会社が入っていました。ただし、主に委託していたのは家賃の回収、入居者募集、退去手続きなどの業務でした。
入居中の修繕、テナントからのトラブル相談、水道検針などは、オーナー自身が対応する状態でした。
こうした方法では、オーナーが対応できるうちは問題が表面化しなくても、長期的に同じ管理体制を維持できるとは限りません。
今回は、オーナー自身による管理の継続が難しくなる事情が生じたため、早急に管理体制を見直す必要がありました。
管理会社がどこまで対応するかが重要
管理会社と契約しているからといって、建物に関するすべての業務を任せられるとは限りません。
ご家族が特に気にされていたのは、今後もトラブルが発生するたびにオーナー本人が対応しなければならないのか、という点でした。
そこで管理受託時には、通常時と緊急時の連絡窓口を整理し、入居者からのトラブルについて24時間の連絡対応が可能であることなど、当社が担う管理業務の内容を説明しました。
管理会社の仕事は、管理委託契約を締結することではなく、契約した管理業務を継続して実行することです。
※24時間の連絡対応は、24時間以内の現地到着や修繕完了を保証するものではありません。対応範囲は管理委託契約や事案の緊急性によって異なります。
2.水道検針と賃料管理を見直し、日常業務を改善
管理受託後、まず取り組んだのが、日常的に発生する管理業務の整理です。
手書きの水道検針から、LINEを活用した申告方式へ
従来はオーナー自身が水道メーターを確認し、使用量や請求額を手書きで管理していました。
しかし、検針が遅れることがあり、過去の記録を確認すると、数値の記入間違いや計算ミスも見つかりました。
当初は当社による現地検針も検討しましたが、オーナー側の費用負担を抑えたいという意向を踏まえ、各テナントに協力していただく方式を採用しました。
現在は、次の流れで管理しています。
STEP 1|メーターを撮影
2か月に1回、各テナントが水道メーターを撮影します。
STEP 2|LINEへ送信
当社の管理システムと連携したLINE公式アカウントへ写真を送信していただきます。
STEP 3|使用量を確認
当社が数値を確認し、前回の検針値との整合性をチェックして使用量を集計・計算します。
STEP 4|料金を精算
確認した使用量に基づき、水道料金を精算します。
これにより、オーナーが各テナントを回って検針し、手作業で計算する負担を減らしました。
また、メーターの写真が記録として残るため、後から数値を確認する際の資料にもなります。
申告された数値をそのまま利用するのではなく、前回値や通常の使用状況と照らし合わせて確認することも大切です。
賃料滞納も解消
賃料の入金状況についても整理し、滞納への対応を進めました。その結果、今回把握した賃料滞納は解消しています。
賃料管理では、毎月の入金を確認するだけでなく、未入金があった際に早期対応できる体制が重要です。
水道料金や賃料などの情報を整理し、オーナー自身が細かな確認作業を続けなくても運営できる方法へ見直しました。
現地作業を増やすだけが管理改善ではありません。管理方法を工夫することで、費用と業務負担の両方を抑えられる場合があります。
管理受託前後で、特に大きく変わった3つの業務を図で整理しました。
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3.清掃・設備保守を見直し、年間15.4万円の固定費を削減
日常管理の改善と並行して、建物に関する各種委託契約も見直しました。
今回の特徴は、単に安い業者へ切り替えたのではなく、必要な管理内容と費用を比較したことです。
エレベーター保守|月7,000円の削減
エレベーターの保守会社は、メーカー系から独立系のジャパンエレベーターサービスグループへ変更しました。
変更前後とも保守契約はPOG方式です。これは定期的な保守・点検を基本とし、契約で定める消耗品等を除いて、部品交換や修理費用が別途発生する方式です。
今回は従来の保守内容と新しい契約条件を比較し、必要なサービスを確認したうえで変更を判断しました。
その結果、月額7,000円、年間84,000円(税別)の保守費用を削減しています。
エレベーターは利用者の安全に関わる設備です。保守費用の安さだけで判断せず、点検内容、緊急対応、保守会社の体制、修理費用の範囲などを確認することが重要です。
共用部清掃|年1回から月2回に変更
以前の共用部清掃は、年1回の大掃除が中心でした。
大掃除では、掃き掃除や水拭きのほか、ワックス掛け、天井や照明器具の清掃なども実施していました。一方、日常的な清掃が十分に行われているとはいえない状態でした。
そこで新しい清掃会社へ切り替え、月2回の定期清掃を導入しました。
現在は、廊下・階段の床、窓、手すり、郵便ボックス、エレベーター内部の床やスイッチなどを清掃しています。建物周辺の草取りも従来より対応する範囲を増やしました。
年1回の大掃除と月2回の定期清掃では、ワックス掛け等を含めた作業内容が異なるため、単純に同条件の比較はできません。
それでも、テナントや来訪者が日常的に利用する共用部を、継続して清掃できる体制に変更したことには意味があります。
清掃頻度を年1回から年24回へ変更しながら、年間費用を24,000円(税別)削減しました。
消防設備点検・マット交換も見直し
消防設備点検についても、必要な点検内容を確認しながら委託先を変更。年間10,000円(税別)の費用削減につなげました。
また、エントランスのマットは月額3,000円(税別)の交換契約を見直し、購入方式へ変更しました。
現在は、月2回の定期清掃時にマットの清掃も行う方法にしています。
これにより、マット交換の継続費用は年間36,000円(税別)削減できました。なお、マット購入時の初期費用は別途発生しています。
4項目の年間固定費削減額
今回の見直しによる年間削減額を、4項目に分けて整理しました。
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| 見直した業務 | 年間削減額(税別) |
|---|---|
| エレベーター保守 | 84,000円 |
| 共用部清掃 | 24,000円 |
| 消防設備点検 | 10,000円 |
| マット交換契約 | 36,000円 |
| 合計 | 154,000円 |
※従前の契約と変更後の継続費用を比較した年間換算額です。マット購入費用等の一時的な支出は含まず、初年度の純削減額を表すものではありません。
今回の改善は、安さだけを求めたものではありません。必要な建物管理を確認しながら、費用の使い方そのものを見直した結果です。
4.遠方のご家族とも協議し、賃貸経営の将来を検討
今回の管理受託では、ご家族との協議も大切な業務でした。
オーナー本人だけでなく、ご家族にも今後の方針を理解していただく必要があったためです。
ご家族の一部は遠方にお住まいだったため、事前にオンライン接続のテストを実施したうえで、オーナー本人とご家族をつなぐ面談を行いました。
面談では、今後の管理業務の内容や、賃貸経営を継続するための体制について説明しました。
特に確認したのは、ご家族が将来的に不動産経営を引き継ぎたいと考えているか、という点です。
保有を続けるか、売却するか
収益物件を所有している場合、賃貸経営の継続だけが選択肢ではありません。
建物の収支や今後の修繕費、現在の賃料水準、売却した場合の金額などを比較し、どのような方針が適切かを検討する必要があります。
今回も、現在の収支を整理し、売却した場合の数字と比較しました。
ご家族は不動産の運営を将来的に引き継ぐことに前向きだったため、当社からは、現時点での売却よりも、管理体制を整えて賃貸経営を継続することを提案しました。
もちろん、不動産を保有し続けることが、すべてのオーナーにとって最善とは限りません。
保有と売却の両方を比較し、オーナーやご家族が納得して方針を決められるようにすることが重要です。
5.家族信託を導入し、将来の財産管理と売却に備える
賃貸経営の継続を検討するなかで、もう一つ重要だったのが、将来の意思決定です。
仮にオーナー本人が病気などで判断能力を失った場合、建物の修繕や賃貸借契約、売却などの判断が難しくなる可能性があります。
管理会社が業務を受託していても、オーナーの財産を自由に処分できるわけではありません。
そこで、将来に備える方法の一つとして家族信託を提案しました。
信託用口座の開設と不動産の信託登記
今回は司法書士と連携して家族信託の仕組みを検討し、信託用口座を開設しました。
これにより、信託財産として管理する資金から、契約で定められた範囲の修繕費などを支出できる体制を整えています。
また、将来物件の処分が必要になった場合に備え、ご家族である受託者に売却権限を持たせる内容とし、不動産の信託登記も完了しました。
実際に売却したわけではありませんが、将来の選択肢を確保したことになります。
家族信託は契約内容と登記の整合性が重要
家族信託は、契約を作れば何でもできる制度ではありません。
受託者がどの財産を管理できるのか、どのような条件で売却できるのか、修繕費をどう支出するのかといった点は、信託契約の内容によって異なります。
信託契約と登記上の記載が、実際に想定している管理・処分方法に対応しているかも重要です。
今回も司法書士と連携し、将来必要になる管理行為や処分の権限を意識して検討を進めました。
なお、信託に関する登記費用等の見積りでは、登記事項証明書や固定資産税評価額を確認できる資料などが必要になる場合があります。
こうした資料を専門家と共有する際は、利用目的や提供先を事前に説明し、適切に取り扱うことも大切です。
家族信託には相応の初期費用や手続きが必要です。すべての所有者に適しているわけではなく、ご本人の意思や判断能力、財産状況、家族関係などに応じた専門的な検討が求められます。
今回の家族信託は、目先の管理負担を減らすだけでなく、将来も賃貸経営を続けられる体制を整えるための取り組みでした。
6.管理会社を変更するなら、管理の範囲まで確認したい
今回の事例では、管理会社の変更をきっかけに、日常業務、固定費、収支管理、将来の資産管理まで幅広く見直しました。
管理会社を選ぶ際、毎月の管理手数料は重要な判断材料です。
しかし、管理手数料が安くても、トラブル対応や建物の維持管理がオーナー任せになっているのであれば、本当に負担が軽減されるとは限りません。
管理会社の変更を検討する際には、次の内容を確認しておきたいところです。
- 現在の管理委託契約の業務範囲と解約条件
- 賃料の入金確認・滞納対応・収支報告の方法
- 入居中のトラブルや修繕時の連絡窓口
- 設備点検・清掃などの委託内容と費用
- オーナーが判断・承認する事項の範囲
- 遠方に住むご家族との連絡・相談方法
- 将来の相続・資産管理についての相談体制
旧管理会社との契約終了日と新管理会社の開始日を調整し、賃貸借契約書、入金状況、預り金、設備保守契約、修繕履歴、鍵、緊急連絡先などを引き継ぐことも重要です。
また、必要に応じて司法書士・税理士などの専門家との連携や、ご家族とのオンライン面談が求められる場合もあります。
管理会社によって対応できる業務範囲は異なるため、委託前に契約内容を明確にしておく必要があります。
大切なのは、管理会社があるかどうかではなく、オーナーが安心して賃貸経営を続けられる仕組みになっているかどうかです。
7.まとめ|管理会社の変更で見直せるのは、管理手数料だけではない
今回の管理受託では、従来オーナー自身が担っていた水道検針やテナント対応などを見直し、賃料滞納も解消しました。
また、共用部清掃を年1回から月2回へ変更し、設備保守等の委託契約を整理。継続的な支出を年間換算で15万4,000円(税別)削減しています。
さらに、遠方のご家族との面談、保有と売却の比較、家族信託の導入まで対応しました。
今回の事例で目指したのは、単に管理費を削減することではありません。
オーナー自身が管理業務を続けられなくなっても、大切な資産を適切に管理し、ご家族が将来の賃貸経営を判断できる体制を整えることでした。
テナントビルの管理会社変更・管理委託をご検討の方へ
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現在の管理会社に不満がある、オーナー自身の負担が大きい、収支や建物の維持管理を見直したいなど、状況に応じてご相談ください。
不動産売買・建築・賃貸管理の知識を踏まえ、物件の状況やご希望をお聞きしたうえで、対応可能な管理業務をご案内します。
emonの管理サービスについて詳しく見る参考資料
※本記事は実際の管理受託事例に基づきます。所有者や入居者の個人情報、契約上の機密に関する情報は省略しています。削減額や管理改善の内容は個別事例の結果であり、他の物件で同じ結果を保証するものではありません。家族信託の法的効果や税務上の取扱いは、個別の契約内容・事情により異なります。
運営:株式会社Emon
