
賃貸物件の冬の凍結・漏水対策|修理費・保険・管理会社の対応を解説
「給湯器からお湯が出ない」「配管から水が漏れている」。冬の設備トラブルでは、修理の手配と同時に、費用を誰が負担するか、保険を使えるかという判断も必要になります。
emonでは、福岡市平尾の管理物件で、給湯器の凍結に伴って配管から漏水し、共用廊下まで水が流れた現場の修繕に対応しました。配管を修繕し、保温材を施工した際の写真を交え、冬の管理で確認したい点をご紹介します。
この記事では、福岡市や糸島市などで賃貸物件を所有する方に向けて、冬前の備えから事故後の判断までを整理します。
平尾の管理物件で対応した、給湯器まわりの配管修繕
※写真は実際の対応現場です。
1.賃貸物件の凍結・漏水は、どこで起きやすい?
福岡でも、冬の配管凍結への備えは必要です。福岡市水道局は、屋外に露出した配管、風当たりが強い場所や日陰、建物の北側にある配管を、特に凍りやすい箇所として挙げています。
確認したいのは、建物の築年数だけではありません。給湯器につながる配管、外水栓、メーターボックス、保温材が傷んだ箇所など、冷たい外気にさらされる部分を見ます。
アパートやテナントビルでは、漏水が他の部屋へ及ぶ可能性もあります。戸建賃貸や一棟貸しでは、敷地内の配管や止水栓の位置を、所有者と入居者が把握できているかも確認しておきましょう。
なお、水やお湯が出ないだけでは、機器の故障と断定できません。配管の凍結で一時的に出なくなっている場合もあるため、症状を聞き取ることが出発点です。
2.冬前に所有者が確認したい設備と予防対策
まずは、露出配管の保温材に破れや欠落がないか、メーターボックスの防寒ができているかを確認します。福岡市水道局は、配管の保温と防水、ビニール袋に入れた布や新聞紙によるメーターボックスの保温などを案内しています。検針やバルブの操作を妨げないことも大切です。
給湯器は、設置されている機種の取扱説明書に沿って確認します。凍結予防機能があっても、周囲の給水・給湯配管まで保護できるとは限りません。通電が必要な機種では、節電のために電源プラグを抜いたり、ブレーカーを切ったりすると、予防機能が働かなくなります。
空室や長期不在、年末年始に休業する店舗では、水抜きや通電の扱いを事前に決めます。「使わないから電源を切る」と一律に判断せず、機器ごとの手順を管理会社や設備業者と確認してください。
入居者へ案内する場合も、一般的な注意だけでなく、その物件の止水栓の位置、給湯器の操作上の注意、緊急連絡先を伝えると、事故後の行き違いを減らせます。
3.給湯器・水道管が凍結したら、修理費は誰が負担する?
修理を進める人と、費用を負担する人を分ける
民法第606条は、賃貸物件を使用するために必要な修繕を、原則として貸主の義務としています。ただし、借主の責任で修繕が必要になった場合は例外です。
一方、国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、貸主が修繕を行い、借主の責任で必要になった修繕費は借主が負担する形で整理しています。標準契約書は住宅向けのひな形であり、すべての契約にそのまま適用されるわけではありません。
つまり、所有者や管理会社が修理を手配したことだけで、最終的な費用負担まで決まるわけではないのです。
凍結したという理由だけで、入居者負担にはしない
経年劣化による故障と、入居者の故意・過失による破損では、判断が異なります。凍結についても、配管の保温状態、機器の使い方、事前案内、当時の気象条件などを確認する必要があります。
凍結防止の案内を送ったという事実だけで、入居者の過失が決まるわけではありません。実行できる対策だったか、実際にどのような操作をしたか、破損との関係があるかまで見ます。
テナントでは、借主が設置した給湯器や配管、修繕負担の特約がある場合もあります。誰の設備か、契約でどこまで負担を定めているか、その条項が有効に適用されるかを確認し、住宅と同じ結論を機械的に当てはめないことが大切です。
負担が未確定でも、漏水を放置してよい理由にはなりません。被害を抑える応急対応を進め、原因や見積りの内訳を記録しながら、費用の扱いを整理します。
修理費の負担は、3つを確認して判断
- 1
誰の設備か
貸主の設備か、借主の設備かを確認します。
- 2
何が原因か
経年劣化・凍結の状況、使い方・保温状態を確認します。
- 3
契約はどうか
修繕の条項・特約と、費用の負担範囲を確認します。
費用負担は、原因と契約を確認して判断します。凍結しただけで入居者負担とは決めません。
4.凍結・漏水事故は保険で補償される?
配管の修理と、水に濡れた被害は別に確認する
「火災保険に入っているから大丈夫」とは限りません。まず、凍結で壊れた配管や給湯器と、漏れた水で傷んだ床・天井・家財を分けます。
火災保険の「水濡れ」の補償では、給排水設備の事故による建物・家財の被害を対象としても、原因となった設備自体の修理は対象外という扱いがあります。配管の修理には、別の補償の確認が必要です。
たとえば、凍結で破損した水道管の修理費を補償する商品がありますが、対象となる配管や支払限度額などに条件があります。凍結しただけで破損がない場合や、給湯器本体の故障まで、同じ補償で対応できるとは限りません。
所有者側の保険と、入居者側の保険を分ける
確認する保険は、損害を受けた物と、誰が誰に責任を負うかによって変わります。
| 損害・責任の内容 | 主に確認する保険・補償 |
|---|---|
| 所有者の建物や付属設備が損傷した | 所有者側の火災保険など。事故原因と対象設備を確認 |
| 入居者自身の家財が濡れた | 入居者側の家財の補償 |
| 入居者が貸主に対して法律上の賠償責任を負う | 借家人賠償責任の補償 |
| 入居者が階下の人の家財などに損害を与え、法律上の賠償責任を負う | 個人賠償責任の補償など |
| 建物の不具合などにより所有者が第三者に法律上の賠償責任を負う | 所有者側の賠償責任の補償。漏水事故が対象か確認 |
- 所有者の建物や付属設備が損傷した
- 所有者側の火災保険など。事故原因と対象設備を確認
- 入居者自身の家財が濡れた
- 入居者側の家財の補償
- 入居者が貸主に対して法律上の賠償責任を負う
- 借家人賠償責任の補償
- 入居者が階下の人の家財などに損害を与え、法律上の賠償責任を負う
- 個人賠償責任の補償など
- 建物の不具合などにより所有者が第三者に法律上の賠償責任を負う
- 所有者側の賠償責任の補償。漏水事故が対象か確認
借家人賠償責任と個人賠償責任は、同じものではありません。また、入居者に法律上の賠償責任がない場合でも、契約などの条件に従って負担した修理費を補償する「修理費用」の補償が付いている商品もあります。
事故が起きたことだけで、誰かの賠償責任が決まるわけでもありません。建物側の不具合や入居者の使用状況など、原因に沿って判断します。
店舗やクリニックの業務に関わる事故は、住宅の日常生活を対象とした個人賠償責任保険で対応できるとは限りません。事業用の賠償責任、設備・商品、休業に関する補償は、それぞれ別に確認します。
emonでも、物件によっては凍結に対応する保険への加入を入居者にお願いしています。ただし、加入していることと、今回の事故が補償されることは別です。所有者側も、保険期間、対象設備、限度額、自己負担額、対象外となる条件を確認しておきましょう。
5.年末年始の漏水・設備故障に、管理会社はどう対応する?
事故が起きたときは、費用負担の結論を待つより先に、被害の拡大を防ぐ必要があります。所有者としては、次の流れを管理会社と共有しておくと判断しやすくなります。
漏水発生から復旧までの進め方
- 1
安全確保・止水
安全に操作できる範囲で水を止め、他の部屋への被害拡大を防ぎます。
- 2
記録・連絡
日時・被害範囲・機器の情報を記録し、写真を残して管理会社などへ連絡します。
- 3
応急対応・調査
専門業者につなぎ、応急処置を行い、漏水の原因を調べます。
- 4
修理・復旧確認
工事内容と費用を整理して修理し、使用再開後も漏水がないか確認します。
修理前の写真・見積書・対応記録を残します。
保険確認のために必要な応急処置を遅らせず、可能な範囲で修理前の写真や見積書を残します。凍結が疑われる給湯器や配管へ熱湯をかけると、破損につながるおそれがあります。機器の取扱説明書やメーカーの案内に従い、無理に操作しないでください。
当社には24時間の一次対応窓口があり、緊急時は工務窓口等を通じて応急対応につなぐ体制があります。ただし、受付できることと、その場で完全復旧できることは別です。年末年始は、業者の稼働や部品の在庫などによって復旧時期が変わるため、見通しと当面の対応を確認します。
また、借主の責任ではない事情で物件の一部が使えなくなった場合、原則として、その部分の割合に応じて賃料が減額されます(民法第611条)。修理費とは別に、使えなかった範囲・期間などを確認し、具体的な減額割合や期間を整理する必要があります。
6.冬を迎える前に、所有者と管理会社で確認しておきたいこと
冬前の準備は、大がかりな工事だけではありません。まず、次の5点を確認してみてください。
- 露出配管の保温状態と、給湯器の凍結予防方法。
- 空室・長期不在・店舗休業中の水と電源の扱い。
- 夜間・年末年始の連絡先と、止水栓の位置。
- 所有者に連絡がつかない場合の応急対応の範囲・費用の扱い。
- 所有者側・入居者側の保険内容と、事故時の連絡先。
費用負担や保険は、事故後に初めて調べると確認に時間がかかります。設備、契約、保険、緊急連絡先をひとまとまりにしておくことが、落ち着いて判断するための備えになります。
emonでは、テナントビル、一棟貸しの店舗・クリニック、戸建賃貸、アパート・賃貸マンションの管理についてご相談を承っています。冬の設備トラブルや緊急時の対応に不安がある方は、現在の管理方法と、特に負担に感じている点をお聞かせください。
参考資料
確認日:令和8年11月3日。保険会社の資料は一般的な仕組みの確認に使用しており、当社や各物件の加入商品・保険金支払実績を示すものではありません。実際の扱いは、契約した商品の保険始期日に対応する約款等をご確認ください。
- 福岡市水道局「水道管凍結の予防方法について」
- リンナイ「凍結による給湯器の破損・故障にご注意ください」
- リンナイ「給湯器の凍結について」
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)について」令和6年度研修会資料・修繕の項(民法第606条掲載)
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」家賃債務保証業者型・第9条、第12条と解説
- 東京海上日動「給排水設備事故の水濡れ等における『給排水設備』とは」
- 損保ジャパン「水道管が凍結した場合は補償されますか?」/パンフレット兼重要事項等説明書・令和7年9月版
- 東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」各種特約/借家人賠償責任・修理費用補償特約の説明
- 東京海上日動「個人賠償責任補償特約で保険金が支払われない場合」/超ビジネス保険・賠償責任の補償の概要
- 東京海上日動「水道管が凍結によって破裂した場合」
- 国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集〜賃借物の一部使用不能による賃料の減額等について〜」
運営:株式会社Emon





